軒の役割と建物寿命
2025.06.25
外壁から伸びている屋根の部分を「軒」といいます。近年の住宅では、「軒の出(のきので)」と呼ばれる軒の長さがない、いわゆる“軒ゼロ”住宅も増えてきました。すっきりとした外観でスタイリッシュな印象を与える一方で、長い目で見たときの「住み心地」や「建物の耐久性」への影響が懸念されるケースもあります。
今回は、日本の伝統的な建物にも多く見られる「軒」が果たしてきた役割についてお話しします。

■季節の調節をしてくれる「軒」
軒は建物に対して日差しや雨を防ぐ“傘”のような役割を果たしています。建築基準法で決められた長さはありませんが、一般的には25cm以上のものをいい、30cm~90cm幅がよく使われています。
軒があると、真夏の強い日差しが室内に入りにくくなります。特に太陽光が当たりやすい南面の窓に軒があると、太陽高度の高い夏は日射を遮り、冬の低い太陽は日差しを室内に取り込むという自然な「季節の調整」が可能になります。

さらに軒先に風が当たることで、外壁の表面温度の上昇を抑える効果も期待できます。建物の“表皮”が高温になると、断熱性能が下がり内部への熱伝導にもつながるため、外壁温度を抑える軒の役割はとても重要です。

■山陰の雨と軒の必要性
また、軒の出があると雨の吹き込みや外壁への水濡れが軽減できます。
山陰では強い風を伴う斜め方向の雨(斜雨)が多いため、軒は“第一の盾”になります。
外壁やサッシもある程度の耐候性を持っていますが、毎日紫外線と雨を直接浴び続けるのと、軒で守られる部分があるのとでは、10年・20年後に大きな差が出てきます。
特に、窓のサッシ周りや外壁のコーキング(継ぎ目や隙間を埋めるために使用される弾力性のある充填剤)、細かなヒビなどは軒があると劣化を緩やかなものにしてくれます💡
■軒のない家はダメ?
先述のとおり、最近では軒の出を無くす住宅も増えています。
軒はメリットも多いですが、敷地条件に合わないケースや、長さによって日射が悪くなったり風が吹き込んだり、と逆効果になるケースもあります。また、軒をつけないことで建物の外形をシンプルにすることができコストダウンにもつながるため、一概に「軒が無い家はダメ!」とはなりません。
軒を設けない場合は、代わりとなるように「サッシ上に庇(ひさし)を設ける」「外壁材に高耐候性の素材を選ぶ」「排水計画を丁寧に設計する」などの工夫があると安心です。
メリット・デメリットを把握したうえで、軒を設ける場合はどこにどんな長さで設計するかが鍵となりますので、設計の際はしっかりと話し合うのがおすすめです。


室内の温熱環境をコントロールしたり、外壁や建具の劣化を遅らせたり、雨漏り・結露のリスクを軽減したりと、建物にとって、見た目以上に大きな役割を果たしている“軒”。
外観デザインに流行はありますが、長く快適に住むための“機能美”として、軒のある暮らしや最適な長さにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
弊社ではお客様の夢や希望を第一に、長い暮らしのなかで後悔のないお家づくりをご提案いたします。新築・リフォーム・リノベーション問わず、気になる事がありましたらいつでもご相談ください☺️

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