2026.3
松江のビルに、旅の止まり木が完成しました。
二階へと続く階段を上がると、そこには町の賑わいを忘れさせる静かな空間が広がっています。一室あたり最大四名様までご宿泊いただける、全三室のゆとりある設計が特徴です。
こだわったのは、旅先での「日常」をいかに美しく、機能的に仕立てるか。壁面を彩るクロスには、光を柔らかく拡散させる落ち着いたトーンを採用し、間接照明でリラックスする空間に。外から戻った瞬間に緊張が解けるような、穏やかな雰囲気を演出しました。
家族や気心の知れた友人たちが一堂に会しても、窮屈さを感じさせない開放的なレイアウト。清潔感あふれるモダンなシャワールームや、長期滞在にも嬉しい生活設備を整えました。
窓の外に広がる松江の日常と、室内に流れるゆったりとした時間。
施主様と一緒に造り上げたこの場所は、旅人の心に寄り添う上質な宿泊空間へと生まれ変わりました。
老舗旅館の伝統を継承しつつ、現代の施工技術により「非日常の安らぎ」を再構築した事例です。
客室は既存の構造美を活かし、天井の納まりや照明計画を一新しました。間接照明が塗り壁の陰影を優雅に描き、視覚的な奥行きと心が安らぐ静かさを生み出しています。
技術と意匠が融合するサニタリー空間はカウンターに陶器の洗面ボウルを配し、異素材のコントラストを強調。緻密なディテール設計により、機能美と工芸的な美しさを両立させました。
ロビー等の共用部も、古材の質感を守りつつ動線を現代化。確かな職人技で新旧を調和させ、建物の記憶を未来へ繋ぐ上質な空間へと磨き上げています。
石畳の街並みに提灯が灯る、風情豊かな港町に佇む宿の外観。
一歩足を踏み入れると、重厚な梁が支える伝統建築の美しさが広がります。
年月を重ねた土壁に、モダンな照明を組み合わせ、幻想的な客室空間を演出しました。
畳の香りに包まれる寝室は、格子窓越しにゆったりとした時間を感じられる設えです。秘密基地のようなロフトへと続く梯子が、旅の高揚感をさらに引き立てます。
浴室は石張りのユニットバスとし、浴槽縁には檜を使用しました。耐久性と意匠性を兼ね備えた素材選定により、伝統的な空間に現代的な快適性を加えています。
日常を忘れ、時を忘れる。贅沢な滞在を叶える特別な一室となりました。
高橋翔太朗設計事務所様とコラボレーションさせていただいた物件です。
松江市東出雲町、豊かな緑に抱かれた「緑蔭山荘別邸」の改修において、私たちは設計者・高橋翔太朗氏が描いた、静謐で奥行きのある空間美を現場で具現化しました。
本プロジェクトの象徴である円形木製風呂は、職人の手による伝統的な造形を現代の空間に馴染ませるため、床や壁との取り合い、そして湯船に浸かった際に見える景色をミリ単位で検証し、据え付けました。
特に、浴室の開口部から差し込む光が水面に反射し、天井の木目へと揺らぎを映し出すよう、開口位置と浴槽レベルの調整を徹底しています。
また、既存の古材が持つ力強さに対し、黒の洗面ボウルや壁出し水栓、繊細なステンドグラスを組み合わせる工程では、新旧の素材が互いの魅力を引き立て合うよう、接合部の美しさに細心の注意を払いました。
左官壁の柔らかな質感や、影の落ち方にまで配慮した施工により、設計図に込められた「静寂の中に宿る光」を確かな手仕事で定着させ、ゲストが心からくつろげる宿泊空間を形にしました。